6月25日、名古屋地方裁判所で、トランスジェンダーの春日井市議・小嶋小百合さんに対する「おっさんだがや」発言を巡る裁判で、市議に賠償命令が下されました。この判決は、単なる発言問題に留まらず、トランスジェンダーの方々への差別やハラスメントについて深く考えさせられるものです。本記事では、この注目の裁判の詳細を解説するとともに、今日の判決が社会に与える意味、そして私たちが向き合うべき課題について掘り下げていきます。
今回の「おっさん発言」裁判の概要

小嶋小百合市議の簡単なプロフィール
- 氏名: 小嶋 小百合(こじま さゆり)
- 年齢: 71歳
- 現職: 愛知県春日井市議会議員
- 出生時の性別: 男性
- 性自認: 女性
- 診断: 性同一性障害の診断を受けている
- 手術: 性別適合手術を受けている
- 戸籍: 戸籍上の性別も女性に変更済み
6月25日、名古屋地方裁判所において、注目を集めていたトランスジェンダーの愛知県春日井市議・小嶋小百合さんが、元市議会議長からの差別的な発言に対して精神的苦痛を受けたとして、損害賠償を求めた訴訟の判決が言い渡されました。大竹敬人裁判長は原告側の請求を認め、男性市議に対し17万円の支払いを命じる判決を下しました 。
この裁判は、社会における多様性への理解、そして表現の自由と個人の尊厳の境界線を改めて問うものとして、大きな注目を集めていました。
名古屋地裁の判決内容とその意味

今回の名古屋地裁での判決は、原告である小嶋小百合市議の訴えを認め、当時市議会議長だった男性市議に対し、17万円の損害賠償の支払いを命じるものでした 。小嶋市議は150万円の損害賠償を求めていましたが、認められたのはその一部である17万円です。
裁判所は、男性市議が懇親会の場で小嶋市議に対し「おっさんやないか」「おっさんだがや」と発言したこと 、さらに「会派のみんなもそう思っている」「そのうち一人は強く同意している」とも話したこと を事実として認定しました。これらの発言は、小嶋市議が精神的苦痛を感じ 、そのショックから行政調査を欠席したり 、会派を離脱するに至ったり 、さらには自律神経失調症や不眠症などの症状が生じた と訴えるほどの深刻な影響を与えたとされています。
今回の判決は、特定の個人に対する性自認を侮辱するような発言が、精神的苦痛を与える不法行為に当たると司法が判断した点で、非常に重要な意味を持ちます。賠償額は請求額を下回るものの、このような発言が許されない行為であるという明確なメッセージを発したと言えるでしょう。これは、LGBTQ+の人々に対する差別的な言動に対して、司法が一定の歯止めをかける姿勢を示した画期的な判決であると評価できます。
なぜ「おっさん発言」は問題なのか?差別とハラスメントの視点
今回の裁判で問われた「おっさんだがや」という発言は、一見すると単なる揶揄(やゆ)のように聞こえるかもしれません。しかし、トランスジェンダーである小嶋小百合市議に対して向けられたこの言葉は、その背景にある差別やハラスメントの構造を浮き彫りにしています。
まず、この発言が問題となる最大の理由は、小嶋市議の性自認を否定し、侮辱する意図があったと判断された点です。小嶋市議は男性として生まれながらも、性同一性障害の診断を受け、性別適合手術を行い、戸籍上の性別も女性に変更しています。そうした経緯を経て、女性として社会生活を送る小嶋市議に対し、あえて「おっさん」という言葉を用いることは、その人のアイデンティティを根底から揺るがす行為に他なりません。これは、SOGIハラ(性的指向・性自認に関するハラスメント)の一種とみなされ、個人の尊厳を著しく傷つける行為です。
さらに、発言が「会派のみんなもそう思っている」「そのうち一人は強く同意している」という形で、あたかも周囲も同調しているかのように語られた点も問題です。これは、当事者を孤立させ、精神的な負担を増大させるだけでなく、集団によるハラスメントを助長する可能性もはらんでいます。実際に小嶋市議は、この発言によって仲間からの裏切りを感じ、会派を離脱するに至っています。
今回の判決は、たとえ個人的な場での発言であっても、他者の性自認を否定し、侮辱する言葉が、精神的苦痛を与える不法行為となり得ることを明確に示したと言えます。これは、多様な性のあり方を尊重する社会を築く上で、私たちが言葉の重みを再認識し、無意識のうちに差別的な言動をしていないか自省を促す重要な機会となるでしょう。
トランスジェンダー当事者の「心の痛み」と社会の課題
今回の「おっさん発言」裁判で、小嶋小百合市議が受けた精神的苦痛は計り知れないものです。訴状などによると、小嶋さんは侮辱を受けたと感じ、そのショックから3日後の行政調査を欠席しました 。さらに、仲間の議員に裏切られたという思いを抱き、長年所属した会派も離脱せざるを得なくなりました 。また、自律神経失調症や不眠症などの症状が生じたとも訴えており 、精神的な損害が議員活動にも支障をきたしたと主張しています 。
この事例は、トランスジェンダー当事者が社会の中で直面する「心の痛み」が、いかに深く、現実的な影響を及ぼすかを明確に示しています。性自認の否定や、揶揄・嘲笑の対象となることは、自己肯定感を著しく低下させ、精神的な健康を損なうだけでなく、社会参加や日常生活にも支障をきたす深刻なハラスメントとなり得ます。
私たちは、今回の判決を単なる個別のトラブルとして捉えるのではなく、多様な性のあり方を認め、誰もが安心して自分らしく生きられる社会を築くための、大きな課題として向き合う必要があります。言葉一つ一つが持つ重みを理解し、無意識のうちに他者を傷つけたり、尊厳を侵害したりすることのないよう、個々人の意識改革が求められています。そして、社会全体として、SOGI(性的指向・性自認)に関する理解を深め、差別や偏見をなくしていくための教育や啓発活動を一層推進していくことが不可欠です。
まとめ
- 本日6月25日、名古屋地方裁判所で、トランスジェンダーの春日井市議・小嶋小百合さんへの「おっさんだがや」発言を巡る裁判の判決が言い渡されました。
- 裁判長は、元市議会議長による発言が小嶋市議に精神的苦痛を与えたと認め、17万円の損害賠償を命じました。
- この判決は、性的少数者に対する侮辱的な発言が、個人の尊厳を深く傷つける不法行為であり、法的な責任を伴うことを明確に示したものです。
- 小嶋市議が経験した精神的な苦痛は、性自認の否定や侮辱が、当事者の精神状態や社会生活に深刻な影響を及ぼすことを浮き彫りにしました。
- 今回の裁判は、多様な性のあり方への理解を深め、一人ひとりの尊厳が尊重される社会の実現に向けて、言葉の重みを再認識し、行動することの重要性を私たちに問いかけています。
- SOGIハラスメントの根絶と、誰もが自分らしく生きられる共生社会の実現は、社会全体で取り組むべき喫緊の課題です。
今回の「おっさん発言」裁判の概要
この判決は、単なる発言問題に留まらず、トランスジェンダーの方々への差別やハラスメントについて深く考えさせられるものです。
記事の内容は、2025年6月25日に名古屋地方裁判所で下された判決に関するものです。トランスジェンダーである春日井市議の小嶋小百合さんに対し、「おっさんだがや」という発言があったことを巡る裁判で、発言した市議に賠償命令が下されました。この記事では、この裁判の詳細、判決が社会に与える意味、そして私たちが向き合うべき課題について解説されています。
この判決は、トランスジェンダーの方々への差別やハラスメントについて考えるきっかけとなる重要なものです
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